九州発 格闘WEBマガジン

ESSAY

RIZIN.33 大晦日にさいたまで過ごすということ

今から20年前、多感な高校生だった僕はコンビニで九州スポーツを買ってから登校した。
一面は「猪木軍vsK-1軍 全面対抗戦!?」みたいな感じだったと思う。
早速僕の元にはプロレス仲間のダサめな軍団が寄ってきて勝敗予想をやり出した。
その後エース格だった藤田和之は怪我で欠場、小川直也は結局逃げて石井館長は激おこプンプン丸。
そんな中で主役になったのは特に人気も結果も残していない安田忠夫だった。
男子なら誰もが知ってるジェロム・レ・バンナを、ギャンブル借金離婚で全てを失った中年がぶっ倒したのだ。
国中のプロレスファンが大騒ぎ、当然僕も親がブチ切れるまで叫びながら号泣した。人生で一番興奮した瞬間は、もしかしたらこの時だった気がする。

あれから20年、さいたまスーパーアリーナの大晦日では毎年格闘技が行われている。
PRIDEが無くなっても、DREAMが無くなっても、守り繋いできた大切なものだ。
初めての大晦日観戦。
会場は満員で足も広げられない、横の人としょっちゅう腕がぶつかる、その状況でも僕はカメラマンの意地で撮影した。
特に何かに使われるでもないし、意味なんてないし、なんだか悔しい思いと共に過ごした大晦日だった。
でもそんな気持ちを忘れたくないから、今こうして書いているのだと思う。


RIZIN観戦はこれで5度目だが、本当に客層が変わった。
会場入りするまでに、100mに一度は朝倉未来そっくりさんとすれ違う。
ああ、僕も若い頃思いっきり千原ジュニアっぽい格好で過ごしてたなと懐かしがった。
試合が始まれば黄色い歓声も飛ぶ。
海ファンのおばちゃんは誰かが寝技に入る度に「危ない!逃げて!」と叫んだ。
そんなおばちゃんまで虜にするぐらい、格闘技の選手はカッコいい、凄いと思われるようになったのだと思う。
若くて甘いマスクの選手だけじゃなくて、扇久保博正や関根シュレック秀樹にもちゃんと声援が送られたから。
泥臭く踏ん張って、下馬評を覆す姿はあの時の安田忠夫を思い出させた。
頑張ってたらいつかきっといいことがある。人間劇場こそ大晦日の醍醐味だし、そんな試合がいくつもあって胸いっぱいになった。


あの時の安田があったから、こんなに大晦日は続いているのかもしれないなーなんて、帰り道にそんなことを思っていたら2022年を迎えていた。
自分の写真道を思いっきり駆け抜けたい。沢山挑戦する。
今年もよろしくお願いします。

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